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(書評ではない)

読んだ本をすかすか忘れていくので
メモっておく場所である
法月綸太郎「生首に聞いてみろ」角川文庫
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    最後にのりりんの本を読んだのはいつだったか思い出せない……というくらいに、遅筆の作家である。しかも私は基本的に文庫本しか買わないので、更に3年遅れる。
    そんなわけで本当に久々のリンタロー。んー、待った甲斐があったというもの。これは実にいい感じ。
    急逝した彫刻家が作った石膏像の首が何者かに持ち去られるというところから物語はスタートし、その犯人と思しき彫刻家の娘の首が展覧会場に送りつけられるというストーリー。伏線の張り方も回収も、ミスリードの仕方も何もかもがフェアで、丁寧に読んでいると探偵と同じ速度で真実に到達できるという誠実さ。
    もうね、探偵の無能をここまでちゃんと描いているという点だけでもこの本は高評価ですよ。探偵ってのは大抵事件が起きてから登場し、そうでないときでも殺人を止められないままで、最後に真実に辿り着こうが無能であることには代わりはないわけで。
    ただ、あまりにも誠実に書いちゃってるもんだから、ラストのカタルシスは得られ難いかもしれないし、ストーリーが非常にゆっくりと進むので短気な人には物足りないかもしれない。それでもこれは十二分に面白い作品だと思うけどね。
    | 法月 綸太郎 | 18:58 | - | - | | ログピに投稿する |
    堂場瞬一「焔」中公文庫
    0
      記憶が甚だあやふやなのだが、確かこの人は野球小説でデビューしたのではなかったか。その後ハードボイルド小説を何本か執筆して現在に至るのだと思うのだが、違ってたかな。
      まあ、私の記憶障害は置いておいて、これはFA権を今期獲得して大リーグを目指そうという野球選手と、そのエージェントになる(予定の)高校時代の同級生を軸にした2週間の物語である。
      私は野球のことなんて全然判らないし、そもそも興味もないのだが、これは面白かった。相変わらず可愛げのない主人公が、ひたすら自分の利益だけを追求していくうちに、本来の自分を取り戻していくストーリー。最後の最後に「こいつ、可愛いじゃん」と思わせることに成功した堂場瞬一は、こういう作品をこそもっと書くべきじゃないか? トラウマ刑事もいいけどさー。
      秀逸なのはアメリカでスポーツエージェントを営んでいる準主役の藍川のキャラクター。神経質でプレッシャーに弱いくせに野望だけはあるという、なかなかいい感じの人物造形である。唯一この作品に私が不満を持つとするなら、最後はもう少し藍川にも救いのある終わり方をしてほしかったってことくらいかな。
      | 堂場 瞬一 | 19:02 | - | - | | ログピに投稿する |
      垣根涼介「君たちに明日はない」新潮文庫
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        リストラのアウトソーシング会社に勤務する主人公が出会う人々の物語。「首切り要員」として訪れる先々で出会う人々の人間模様を浮き彫りにしていく。主人公は一見軽そうなのだけれど、実はリストラされる立場を経験している人間でもあり、なかなかにいい感じに複雑なキャラクター。マニュアル男のような一面もあれば、非常にファジーな一面も見せ、なにより根底に誠実さがある。この主人公の成長物語にしないところが、この話もキモかもしれない。
        とにかく垣根涼介は女性のキャラクター造形が秀逸で、今回の作品に登場する41歳の会社員も非常に魅力的。人間が出来すぎているわけでもなく、かといって幼いわけでもなく、実に絶妙なバランスなんである。こういう女性をヒロインに据えてみせるところとか、本当にこの人はセンスがいいなーと思う。
        「午前三時のルースター」から読んでいるわけだが、この人はなんでこんなにというくらい巧くなっていったよねえ。今や私の中では鉄板作家へ仲間入りである。
        | 垣根 涼介 | 19:04 | - | - | | ログピに投稿する |
        古処誠二「分岐点」光文社文庫
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          この人の作品はデビュー作から好きなのだが、どうにも感想が書きにくいというのも事実なんである。あまりにも真面目に、かつ端正な文章で書かれてしまうと、おいそれと適当なことを書いてはいけないような気分になっちゃう。
          今回の物語は終戦間近、皇国少年は何故下士官を殺したか? という謎を追う物語。他の同級生から浮くほどの律儀さと勤勉さ、そして厳しさを兼ね備え、どこでも覚えのめでたい少年が、何故自分を気に入っている下士官を殺すのか。そしてそれを何事もなかったかのように隠蔽し、平然としていられたのか。
          いや、もうね。ラストには鳥肌が立ちましたよ。「ルール」のときもそうだったけど、最後の最後に読者を奈落へ突き落としてくれるとは。少年のあまりに美しい佇まいに、私は性懲りもなく泣きました。
          | 古処 誠二 | 15:50 | - | - | | ログピに投稿する |
          光原百合「最後の願い」光文社文庫
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            私は貧乏臭い話が嫌いなので(ゴージャスなものが好きだというわけでもないが)、小劇場演劇をネタにした小説は今までどうも苦手だったんである。小劇場演劇が貧乏臭いと思っているわけではなくて(実際好きで観に行くし)、何故か小説になると貧乏臭さのマストアイテムみたいになっちゃうのが厭なんである。
            で、この作品。芝居に関わる青年たちが(今回探偵役と呼べるのはふたりいる)、第1回の旗揚げ公演に至るまでの、仲間探しを軸に数々の日常の謎を解き明かしていくというストーリー。1話1話のクオリティはフツーかなーという感じなのだが、青春小説としても成り立っているところがいい。探偵役ふたりの青年のキャラもいい感じ。そして何より、私の嫌いな貧乏臭さをあまり感じさせない。
            個人的には最初の話が好きかな。あまり重くもなく、登場するお嬢様のイヤさ加減が絶妙。どうやら私はこの人のハートウォーミングな作風そのものにはあまり興味がないらしい。
            | 光原 百合 | 15:34 | - | - | | ログピに投稿する |